ロシアのプーチン大統領の主導するウクライナ侵攻が長期化し、燃料高騰や為替相場が急激に円安に振れたことを受け、輸入食料品を中心に値上げラッシュとなっている。ロシアもウクライナも世界有数の穀物輸出国として国土には小麦をはじめとする穀倉地帯が広がっており、そこが戦火に見舞われることの影響は甚大だ。かつて、第二次大戦後の復興期の吉田茂内閣において池田勇人・蔵相(後の首相)は「貧乏人は麦を食え」と発言してその物言いに批判が集まったが、失言の前提となっていた“食品価格の常識”が大きく塗り替えられようとしている。
4月に入り、大手製粉会社は相次いで業務用小麦粉などの値上げに踏み切ることを発表。政府が輸入小麦の売り渡し価格を平均17.3%引き上げたことを受けての値上げであり、パンやうどん、菓子など様々な食料品の価格に影響を与えることが確実だ。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「価格上昇はこれからも続く」と警鐘を鳴らす。
「4月の政府売り渡し価格は、まだウクライナ情勢の悪化による影響をほとんど受けていない段階のものです。収穫されてから流通するまでにはタイムラグがあるので、小麦に関してウクライナ戦争の影響が本格的に表われるのはこれからだと考えていい。価格上昇は長期にわたって続くことが懸念されています」
前述の池田氏は、首相時代に「所得倍増計画」を打ち出したことで知られ、同じ宏池会の流れを汲む岸田文雄・首相は「目標とする人」に池田氏を挙げている。その一方で池田氏には、蔵相時代に失言を繰り返してたびたび問題化していたという一面もある。とくに1950年の冬に米価格が高騰するなかでの国会答弁で「所得の少ない方は麦、所得の多い方は米を食うというような経済原則に沿ったほうへ持っていきたい」と発言したことは、“貧乏人は麦を食え”というフレーズとして広まり、多方面から非難を浴びた。