2022年は「公的年金」の大改正が実施される。年金は原則として65歳受給開始だが、額が減る代わりに受給開始を早められる「繰り上げ受給」や、反対に受給開始を遅らせる代わりに額が増える「繰り下げ受給」が選べる。その双方のルールが変更されるのだ。
まず繰り上げについては、これまで受給開始を1か月早めるごとに0.5%の減額だったのが、0.4%減に緩和される。繰り下げを巡ってもルール変更があり、これまでは70歳までしか繰り下げられなかったのが、4月以降は75歳までの繰り下げが可能になる。
これにより60代のうちに会社を辞めて65歳以降は年金生活という“常識”が、大きく塗り替えられていく。今年の年金改正は「少しでも長く働くこと」を奨励する意図があると年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏は指摘する。
「これまで60~64歳は厚生年金(報酬比例部分)と賃金の合計が月額28万円を超えると、超過分の2分の1にあたる年金が支給停止になっていた。それを避けるため、働く量(稼ぐ額)をセーブする人が多くいましたが、今年4月からは基準が月額28万円から47万円に緩和された。60代以降も働き続けることを前提とする制度変更です」
改正前の制度のもとでは、年金支給停止を避けるテクニックが注目されていた。年金カットの対象となるのは厚生年金に加入して働く人のため、会社を離れたフリーランスとして収入を得て、年金を満額受給するという方法があった。しかし、今回の改正でそうした働き方のうまみは減じ、「むしろ会社員でいることのメリットに改めて着目したい」と北村氏は言う。
「今回の改正で『在職定時改定』という制度も導入されました。これまで65歳以降に厚生年金を受け取りながら会社員として働く人は、65歳以降に納めた保険料が年金額に反映されるのは70歳時点だった(70歳より前に退職した場合は退職時)。それが改正により毎年10月に年金額の改定が行なわれることになりました」