吉田みく「誰にだって言い分があります」

「いつまで手書きにこだわるの?」幼稚園の先生「おたより」をめぐる世代間ギャップ

デジタル化をめぐる混乱は幼稚園にも…(イメージ)

デジタル化をめぐる混乱は幼稚園にも…(イメージ)

 DX(デジタルトランスフォーメーション)花盛りである。教育現場でも、コロナ禍を機にオンライン授業の導入が進み、学校と生徒・保護者間の連絡手段として様々なITツールが導入され始めている。IT利用促進の流れは、幼稚園にも押し寄せている。だが、教員たちの間でも、現場でどう進めていくべきか意見がわかれているようだ。フリーライターの吉田みく氏が、世代の異なる2人の幼稚園教諭に話を聞いた。

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 様々な分野でデジタル化が進んできている。コロナの影響もあり、さらに進んだ印象を受ける。しかし中には、IT利用による簡略化を必ずしも良しと思わない現場もあるようだ。今回、幼稚園教諭として働く2人から、異なった意見を聞くことができた。

 千葉県在住の幼稚園教諭ショウコさん(仮名、24歳)は、「幼稚園の仕事がアナログすぎてモヤモヤしている」と嘆息する。

「私が働く幼稚園では、園からのおたよりは手書きで作っています。パソコンで作ったほうが早くきれいな仕上がりになると思い、ベテランの先生に相談したところ、『うーん。温かみがないなぁ』と、却下されました。納得できません」

 そもそも手書きの文字が苦手なショウコさんは、おたよりを1通作成するのに3時間くらいかかってしまうそうだ。毎週のことで、「おたよりつくりは苦痛で仕方がない」という。作業は帰宅してからになることが常態化していて、自分の時間が減ってしまうことに悩んでいた。

「発表会の衣装づくりの時には、『最近は安くてかわいい衣装がネットで簡単に手に入るので、購入してはどうか』と、提案したことがあります。しかし、それもベテラン先生たちに却下されました。

 理由は、手作りのほうが雰囲気により合ったものを用意できるからだそうです。でも使うのは一瞬。そのために、私たちのプライベートを大量に割くのは違うと思います」(ショウコさん)

 仕事量は多いが、月収は20万円弱だという。「割に合わないです」と、ショウコさんは嘆いていた。業務負担を減らすためにどんな提案をしても、ベテラン先生からは「時間と手間をかけるほうが、保護者からの印象が良くなる」と言われてしまうという。自分の時間を確保するために、ショウコさんは別の幼稚園へ転職することを検討しているそうだ。

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