「今までのやり方には理由がある」
一方、「今までのやり方を変えるのはリスクがある」と指摘する人もいる。
埼玉県在住の幼稚園教諭、タカコさん(仮名、48歳)は、20代の職員たちに手を焼いているそうだ。タカコさんはこう言う。
「『おたよりじゃなくてメールでいいのに』と、不満を言う若手の先生は少なくありません。ですが、メールチェックの習慣のない保護者もいます。その人たちのフォローをその都度するくらいなら、紙でおたよりを作成して連絡帳に挟んで子供たちに持たせるほうが確実です。今まで続いてきているやり方には、それなりの理由があるんですよ」
タカコさんは幼稚園教諭歴20年以上のベテラン。おたよりを手書きで作ることも、学芸会の衣装を一から作ることも苦ではないという。
「たしかに時間がかかることは多いですが、慣れれば早くできるようになるので気になりません。むしろ、今までのやり方を変えられる方がついていけなくなるので辛いです。
最近はITを利用した効率が重視される世の中なのかもしれませんが、幼稚園のような、子供と保護者とのかかわりを大切にする仕事は例外だと思います。職員が時間をかけて丁寧に作った愛情いっぱいの制作物は、子供たちにもいい影響を及ぼすのではないでしょうか」
作業効率を上げるための提案も、職場によっては受け入れられないケースもあるようだ。今回の幼稚園と同様に、様々な理由や事情で“アナログ文化”から抜け出せない職場はまだたくさんあるのではないだろうか。