何らかの事情で、祖父母が孫を預かり、経済面も含めて、面倒を見るというケースがある。その場合、祖父母が負担した学費や生活費を返済してもらうことは可能なのだろうか──。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
娘がこの4月に急逝したため、孫を一時的に引き取りました。孫には父親がいますが自営の仕事が忙しく、子育てが疎かになる恐れがあったため、私たち夫婦が面倒みることにしたのです。
孫は3月の高校卒業後、浪人して予備校に通っています。いまのところ、孫にかかるすべてのお金(予備校代、通学定期代、生活費など)は私たちが立て替えていますが、その父親がお金にルーズなため、きちんと返済されるか不安です。どのような対策をしておくべきでしょうか。(79歳・主婦)
【回答】
お孫さんはあなたがた夫婦の直系血族です。お婿さんにとっても子供は同様に直系血族です。民法では、直系血族や兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定めています。このほか特別な事情があるときには、家庭裁判所が3親等内の親族間で扶養義務を負わせることがありますが、直系血族は、直系血族間で扶養を必要としている人がいれば、それだけで扶養できる人は扶養すべき法的な義務が当然に発生します。お孫さんの扶養が必要になると、直系血族であるあなたがたやお婿さんに扶養義務が生じます。
このように複数の扶養義務者がいる場合には、その扶養義務の順番や負担の割合、方法はまず協議して決めます。そこでお婿さんと話し合って、お孫さんの生活費や学資の負担、さらには4月から支払い済みの負担分の清算などを決めればよいと思います。
しかし、こうした協議が調わないときは家庭裁判所の調停で話し合い、それでもまとまらなければ審判で決定してもらいます。その場合、まず扶養の順番ですが、孫が未成年者の場合は、親権者は生活保持義務といって、極端に言えば自分の身を削っても子を養う義務があるので、祖父母に先立って扶養義務を負うことになります。ご質問の場合では、お孫さんは18才以上で成人しており、親が生活保持義務まで負うかは疑問です。