そして連れ込み役は「占い」を口実に、相手の個人情報を聞き出して、それを霊能師に伝えます。その情報をもとに、霊能師は占い鑑定などを行い、次々にその人の事情を的中させていきます。当然、話を聞いた人は、霊能師に信頼を寄せますので、聞き耳をもったところで、次の展開に移ります。
〈「このままだと、大変なことが必ず起こる」「不幸になる」と断言しながら、少しずつ相手の心を追い込んでいきます。そして「今、陥っている不幸の原因は、過去の先祖の罪があり、その因縁を背負っているからだ。それで悩みが深くなっている」と断定口調で話してきます〉
まさにここがマインドコントロールの重要なポイントになります。先祖の悪因縁など目に見えない存在を使い、「不幸が訪れる」といって恐怖心を覚えさせます。恐怖にいったん心がとらわれてしまうと、簡単には逃れられなくなります。霊能師の言葉に一喜一憂しながら、相手の思い通りの方向に進まされてしまいます。
より深い「恐怖心」を刻みつけられたところに…
これでほぼ簡易なマインドコントロールは完成ですので、後は「救いの手」を差し伸べればいいだけです。壺や多宝塔という、因縁を切り、悪霊を浄化させるというグッズを売りつけます。多くの人は購入させられてしまいます。ここであえて、マインドコントロールに「簡易」という言葉をつけたのには、わけがあります。より深い教化をするために、教団のマインドコントロールはさらに続くからです。
実際に、霊感商法でモノを売りつけられただけで終わった人もいますが、その一方で多くの人がその先にある教義を教え込む場に誘われます。その違いは、マインドコントロールの濃淡にあるように思います。それはその人の置かれた事情によって違いますが、もし教団側が霊界への恐怖心などが「濃」な人だと思われれば、その先に進まされます。「淡」だと「少し時間を置こう」などといって、敬遠される傾向があります。
次のステップに誘われた人は、当然、壺を販売した人たちが信者であることはわかりませんので、正体を隠されたまま教団の関連施設に誘われます。「悪因縁などを解決するため」という口実で、教義を教えこまれる場所に誘い込まれてしまうのです。そして霊界の存在や悪魔(サタン)の存在を信じるように仕向けられて、より深い「恐怖心」を心に刻み付けられます。そこに救いの存在として、「壺」ではなく「再臨のメシヤ」がやってくるわけです。そして教団の信者となり、多額の献金をさせられて、家庭が崩壊の道を歩むことになります。