もちろん年間70万円の学費で、そこまでのサービスはできるわけがなく、公費からの助成金が出ている。文部科学省が令和3年に公表した「私学助成について」という資料によると、私立中学への助成金として、令和2年度は生徒一人あたり約33万円が出ている。
一方、公立中学の生徒たちに公費がどのぐらいかかっているのか。令和3年公表の文部科学省「地方教育費調査」によると、令和2年度に公立中学の生徒一人に費やされた公費はおおよそ119万円。つまり、私立中学への生徒の3倍近い額が公費から出ている。
対象世帯は全体の半分以下
公立校よりも私立校へ助成が少ないのは当然のことだと思う読者も多いだろう。ただ、経営面でみると、すべての私立に必ずしも潤沢な経営資金があるわけでないはずだ。
私立中学の生徒に使われるお金は保護者が払う学費70万円に助成金約33万円で約100万円。一方、公立中学の生徒には公費から約119万円。このデータだけをみると、私立中学は公立に比べて多いとはいえない予算で手厚い教育サービスを提供していることになる。そのため、一部の私立中高一貫校が署名運動をするなどして、助成金を増やすように行政にうったえてきた経緯がある。
少子化対策の必要性が謳われる現在、行政も私立中学への助成も増やしていく必要があろう。しかし、コロナ禍で都の財源も潤沢ではない。そこで今回の案が出てきたのではないか。私立中学への助成金を増やすのではなく、所得制限をもうけて、生徒の家庭に直接月10万円を支払うとことにすれば、公費の支出は少なく済む。
そして、今回の案で対象となるのは世帯収入910万円未満の家庭である。これの意味もみていこう。
文部科学省が平成30年に公表した「子供の学習費調査」によると、私立中学に子供を通わせる家庭の世帯収入(年間)は、1200万円以上が最も多く、35.5%、1000万円から1199万円が16.8%、800万円から999万円が19.8%、600万円から799万円が16.8%、400万円から年収599万円は7.2%、年収400万円未満が3.9%となっている。