しかし、小学生のように幼い子供は自分の行為の結果がもたらす責任を理解する力(責任能力)がないので、賠償責任を負うことはありません。その場合は、監督を怠らなかったことを証明できない限り、親権者が賠償責任を負うことになります。道路に飛び出している以上、監督や指導を怠らなかったとはいえないので、小学生の親には息子さんの損害を賠償する義務があると思います。
次に過失相殺ですが、本件とは逆に、自転車と歩行者の衝突事故で歩行者が被害者になった場合では、被害者である歩行者の過失相殺の割合は基本ゼロです。飛び出しがあった場合に10%くらいになるだけで、非常に小さいとされています。
損害の公平な分担を図るための過失相殺の過失と、不法行為責任の根拠となる過失とは同一視できませんが、歩行者が加害者になる場合、被害者である自転車側の過失割合は大きいと思います。
その程度は最終的に裁判所が判断しますが、自転車走行が歩車道の区別のある車道か、自転車走行できる歩道か、前方の見通し状況は良好か、子供の出入りが多い場所か否か、運転速度はどうだったか……などの事故の状況によって、過失割合は変わってきます。
歩道上の走行であれば徐行が求められますし、店や住宅の入り口や脇道、あるいは看板などの遮蔽物からの飛び出しも予見できる場所であれば過失相殺される割合は大きくなります。子供の行為が危険だったと理解してもらえるように事故発生の状況を整理したうえで、小学生の親に交渉してはいかがでしょうか。
しかし、歩行者に多くの負担を求めるのは難しいと思います。
※女性セブン2023年2月9日号