トラックドライバーの長時間労働是正を目的とした「働き方改革」により、これまでのような日程や料金で物を運べなくなることが懸念される「物流2024年問題」。新年度を控え、ハイシーズンを迎えた引っ越し業界にもその影響は及ぶとされている。トラックや人員が確保できずに希望する日程や料金で引っ越しができない「引っ越し難民」の増加も懸念されるなか、業者に頼らない引っ越しを検討する人もいるのではないか。
自力で引っ越しを考えた場合でも人手が必要な場面はあり、家族や友人・知人に助けを頼むケースもあるだろうが、そうした場面ではプロに依頼する時とは異なる苦労があるようだ。フリーライターの吉田みく氏が報告する。
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引っ越しプラットフォーム「HAKOPLA」を運営するリベロが加盟業者143社を対象に行った調査によると、2024年春、引っ越し申し込み件数が昨年より増えると回答した業者は47%。さらに、コスト増や「2024年問題」などの影響で、64%の業者が春の繁忙期の成約単価は「昨年より上がる」と予測。49%の業者が今春は「引っ越し難民が発生する」と回答した。
業者を利用した引っ越しのハードルが上がるなか、自力での引っ越しを選択する人もいる。都内の賃貸マンションで一人暮らしをする会社員・マサオさん(仮名、36歳)は昨秋、近所に新しい部屋を見つけて引っ越したが、費用を浮かせるために業者に頼まないことを決意。友人5人に声をかけ、昼食代と作業後の慰労会を約束してお願いした。
「想像以上に大変でした。冷蔵庫やソファなどは重いし、慣れないトラックの運転にハラハラ……。それだけに作業が終わった後の達成感がすごくて、慰労会はすごく盛り上がりました」(マサオさん)
作業の疲れもあり、友人たちの食事とお酒を頼むペースはすごく早かったそうだ。居酒屋での慰労会は長時間に及び、会計は3万円以上となった。
「慰労会の出費は予想の倍になってしまいました。昼食代で1万円弱、トラックのレンタル代で約1万円。体の疲れもなかなか取れず、1週間はだるさが残りました。作業中は手伝ってくれる友人に気を使いますし、結果的に引越し業者に依頼するほうがよかったのかも……と思ってしまいました」(同前)
今回の経験を踏まえ、次に引っ越しするときは出費を覚悟で業者に依頼したいとのことだった。