苦手だと思う人と話したほうがいい場面とは(イメージ)
新規事業支援の現場で数多くの対話=「壁打ち」を重ねてきた、リクルート出身のコンサルタント・石川明氏(インキュベータ代表取締役)は、普段なら避けたい苦手な相手とあえて対話することを推奨する。ときにネガティブな指摘こそ、アイデアを磨き上げる格好の材料になると説く。どのような理由からなのか。石川明氏の著書『すごい壁打ち』(サンマーク出版)から再構成して紹介する。《全3回の第2回》
苦手な人・嫌いな人が持っている異なる感性や価値観が重要
さらに「拡張」を図りたいなら、普段であれば避けてしまいそうな相手、苦手だと感じる人、あまり好きではない人とも、思い切って壁打ちを試してみましょう。意外な発見があって面白いものです。
私にも苦手なタイプの人はいます。せっかくポジティブに発想を広げて可能性を探ろうとしているのに、事細かに課題ばかり指摘してくる人や、何か新しいことを提案しようとすると「前例はあるのか」「エビデンスはあるのか」とばかり問う人、何かにつけ「所詮は……」「どうせ……」といった枕詞がつきがちな人など、こうした人は話していると気持ちが萎えるので、正直なところ得意ではありません。
しかし、実際に自分の案を実現に向けて磨いていこうと考えると、これらの指摘は避けて通れないものばかりです。最終的に、あなたから提案を受ける決裁者も、同じような反応をするかもしれません。つまり、これらの「壁」は、いずれ乗り越えなければならないものなのです。
そう考えると、「えいや!」という気持ちで声をかけ、苦手な人とも壁打ちを事前にしておくに越したことはありません。
実は、私たちが「苦手」「嫌い」と感じる相手には、自分とは異なる感性や価値観、信念を持っている人が多いものです。誰でも、自分の持つ価値観や常識を基準に物事を考えがちです。しかし、それは時として、知らず知らずのうちに思考の幅を狭めてしまうことにもなります。そんなとき、あえて自分とは違うタイプの人の視点を借りて、一旦受け入れてみることで、新しい気づきが得られるのです。
もちろん、苦手な相手に声をかけ、話をすることには抵抗があるでしょう。だからこそ、心に余裕があるときを選んで挑戦してみてください。