6月7日に発表された5月の中国貿易統計は輸出、輸入とも前年同期比マイナスに沈んでいる。輸出(ドルベース、以下同様)は▲3.3%減で4月と比べ6.8ポイント悪化した。新型コロナウイルスの影響は、欧米では少し落ち着いた感があるが、グローバルでみれば依然として厳しい。特殊要因として、マスクを含む紡織品の輸出が急拡大しており、そうした部分を差し引いて評価すれば、この数字以上に厳しい。
一方、輸入は▲16.7%減で4月よりも▲2.5ポイント悪化している。数字面だけみると、酷く落ち込んでいるようだが、エネルギー、鉱物などの輸入価格が低下していること、また海外で新型コロナの蔓延によってサプライチェーンが影響を受けていることなどを考慮する必要がありそうだ。
数量ベースでみる限りでは、建材関連で輸入量の改善がみられる。内容を細かく分析すると、中国の内需はむしろ回復しているといった見方もできる。
中国の自動車産業は世界最大規模。国内に多くの裾野産業を抱えており、内需に与える影響も大きいが、5月の乗用車販売台数は160.9万台で前年同月比1.8%増、昨年の6月以来の増加となった。変化率を見ると、1月から3月にかけて▲20%、▲78%、▲40%と大きく落ち込んだ後、4月、5月は▲3%、+2%と急回復している。
3月31日に行われた中国国務院常務委員会において、自動車購入促進政策を打ち出す方針が決まり、4月28日には新しい排ガス規制の導入時期延長や新エネルギー車購入補助政策の期限延長、自動車ローン条件の緩和などの優遇措置に関する通知が発表された。これが急回復の最大の要因であろうが、新型コロナウイルスの封じ込めに成功したことで、中国の消費マインドが回復しているといった面も無視できない。
国土が広いうえ、都市交通インフラの整備が遅れている地区も多く、潜在的な自動車需要は大きい。政府は雇用不安を防ぐ政策を打ち出しており消費マインドの落ち込みは小さい。金融緩和政策の効果もあって今後も、自動車販売台数は増勢が続きそうだ。