今や“1000円カット”チェーンが日本全国に進出し、安くて早い理髪店がすっかり定着するようになった一方で、昔ながらの街の理髪店に長年通い続けるという人もまだまだいる。1000円カットに比べれば、値段も割高で時間もかかりがちなのに、なぜ街の理髪店を選ぶのか。その魅力をヘビーユーザーたちの声から探った。
「もうかれこれ20年以上同じ理髪店に通っています」
そう話すのは、東京都在住の40代男性会社員・宮本さん。1~2か月に1回の頻度で、近所の商店街にある理髪店Aに通っているという。
「初めて行ったのは、就職して一人暮らしを始めた20代前半のときです。親子で経営しているお店で、清潔感があって、技術もサービスも大満足でした。その後、いくつか他のお店にも行ったんですが、結局Aがいちばんしっくりくるということで、ずっと通うようになりました。いまは引っ越して別のところに住んでいて、引っ越し先で別の理髪店も探したのですが、やはり満足できるお店には出会えなかった。結局、電車に乗ってAまで通っています。料金は、カットと顔そり合わせて3960円です」(宮本さん)
同じ店に通い続けるメリットは、何なのだろうか。
「基本的に私は髪型を大きく変えないので、行き慣れたところのほうが、髪型に関するオーダーをする必要がないのは楽です。“いつもくらいで”とお願いすれば、完璧にいい感じに仕上げてくれる。自分にとってしっくり仕上げてくれる理髪店って、見つけるまでが大変じゃないですか。だから一度出会った理髪店は、もう変えるのが面倒です。絶対に失敗がないというこの安心感は絶大です」(宮本さん)
また、コミュニケーションの煩わしさも一切ないという。
「私は、髪を切ってもらっている時、ほとんど会話をしないんですが、それもちゃんと理解してくれている。だから、無駄な世間話をすることもないし、仕事などについて聞かれることもない。そういった形のサービスが20年以上続いているので、無言でも気まずくなることがない。私にとっては理想の理髪店です」(宮本さん)