新年度が始まり、会社や学校に“自転車で通うことになった”という人もいるかもしれない。警視庁のデータによると自転車に関連する事故は、2016年から2022年にかけて増加傾向にあり、なかには多額の損害賠償が請求された事例もある。2013年には、自転車に乗っていた小学生が、60代女性と衝突する事故で後遺障害を負わせたとして「9521万円」の損害賠償が発生している。
こういった自転車事故による損害賠償に備えることを目的として、自転車保険の加入を促す自治体が増加している。自転車事故にはどのような保険で備えるべきなのか、解説していこう。
全国で自転車保険の加入義務化が進む
自転車事故による損害賠償が高額になることを問題視した国土交通省は、2019年に全国の自治体へ自転車保険への加入を条例で義務付けることを要請した。その成果もあり、2023年4月1日時点において、32の都道府県が自転車保険の加入を義務化し、10の都道府県が努力義務として加入を促している。自転車保険の加入義務化は全国的に進んでいるともいえるだろう。
もっとも、自転車保険への加入を義務化する自治体が増える一方で、未加入者に対する罰則は設けられていない。あくまでも自転車保険の必要性を訴えたうえで、加入するかどうかは、運転者に委ねられているのが実情だ。
すでに加入している保険でカバーされている場合も
自転車事故による損害賠償をカバーできる火災保険や個人賠償保険に加入している場合は、基本的には新たに自転車保険へ加入する必要はない。ただし、後述する補償額や補償内容を確認のうえ、必要に応じて加入を検討するべきだろう。
自転車保険や火災保険、個人賠償保険などの損害保険は、実損額を補償するという特徴がある。そのため、加入している保険が多いからといって保険金額が大きくなるわけではない。例えば、自転車事故によって1000万円の損害賠償が請求された場合に、補償金額が3000万円の自転車保険と、2000万円の個人賠償保険に加入していても、支払われる保険金は1000万円になる。