1&1の持ち株会社であるユナイテッド・インターネットはドイツ屈指のネット企業で、もっと便利なフランクフルトやミュンヘンへの本社移転の誘いは何度もあった。しかし地元愛の強いドマームースはがんとしてモンタバウアーを動かず、森の中の街で雇用を産み続けた。
ドイツの携帯電話市場は「T-モバイル」のブランドで知られるドイツテレコム、英国資本のボーダフォン、スペイン資本のテレフォニカ・ドイツの3社による寡占が続いてきた。そこに「4社目」として飛び込む構図は、日本における楽天モバイルと同じである。
毎年、スペインのバルセロナで開かれる世界最大の携帯関連見本市「MWC(モバイル・ワールルド・コングレス)」で、在来の通信方式に比べて設備投資が3割、オペレーション費用が4割安い楽天モバイルの完全仮想化技術を見つけたドマームースは、楽天と組んで強力な先行3社に挑むことにした。
キャリアの振り出しが銀行員で、ネットの出現とともに急成長し、既得権に挑む。起業家としてよく似た人生を送ってきた三木谷と意気投合するのにさほどの時間はかからなかった。楽天が傘下にJリーグのヴィッセル神戸を持ち、2022年までスペインのFCバルセロナとスポンサー契約を結んでいたように、1&1も2020年からドイツ・ブンデスリーガの強豪で、かつて香川真司が活躍したボルシア・ドルトムントのユニフォーム・スポンサーになっている。