また、車両が通過するときには、バラストはレールを支えるだけでなく、おもに次の3つの役割を果たしています。
【a】荷重を分散させる
【b】振動を吸収する
【c】音を吸収する
【a】の「荷重を分散させる」は、路盤にかかる負担を減らし、路盤の沈下を防ぐうえで重要です。もしまくらぎを路盤の上に直接置くと、車両から受ける荷重がまくらぎの下だけに集中してかかります。いっぽう、まくらぎと路盤の間にバラスト道床があると、荷重が広く分散します。
【b】の「振動を吸収する」は、バラスト道床がクッション(緩衝材)の役割を果たすためです。振動を吸収できると、車両の乗り心地を良くなるだけでなく、路盤を通して線路の周辺に伝わる振動を減らすことができます。
【c】の「音を吸収する」は、バラスト道床のすき間が吸音材の役割を果たすためです。音を吸収できると、走行時に発生する音が、車両の車内や、線路の周辺に伝わりにくくすることができます。
バラスト軌道の4つのメリット
さらに、バラスト軌道には、おもに次の4つのメリットがあります。
【1】バラストが入手しやすい
【2】敷設が容易
【3】水はけがよい
【4】雑草が生えにくい
【1】と【2】は、建設にかかるコストや期間を減らすことにつながります。バラストは、全国各地にある採石場で容易に入手できる上に、安価です。また、バラスト軌道は、後述する「省力化軌道」とくらべて低コストかつ短期間で敷設できますし、レール位置の微調整や、災害時の復旧作業も容易です。
【3】と【4】は、軌道の状態を良好に保つことにつながります。バラストを地面に敷くと、雨水がその隙間を通って排出されますし、日照を遮って雑草の育成を妨げることができます。
バラスト軌道には、以上紹介したような多くのメリットがあるため、日本の鉄道のみならず、世界中の鉄道で使われています。
ただし、バラスト軌道にも弱点があります。車両の通過によって繰り返し荷重がかかると、まくらぎが沈下したり、レールの位置がずれたりします。また、荷重によってバラストの角が丸くなる、もしくは割れて小さくなると、バラスト道床のすき間が小さくなり、クッションがききにくくなります。
つまり、バラスト軌道は経年劣化が起こりやすいのです。このため、バラストを交換する、もしくはバラスト道床を突き固めるといったメンテナンスを定期的に実施しないと、良好な状態を保つことができません。
そこで、近年建設された鉄道では「省力化軌道」が多用されるようになりました。「省力化軌道」とは、メンテナンスを簡略化する目的で開発された軌道の総称であり、代表例には、山陽新幹線以降に建設された新幹線で多用されている「スラブ軌道」があります。