私有地を通るために支払う「通行料」。取り決めた金額が支払われないというトラブルは、どのように解決すればいいのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
父亡き後、母と私を含めたきょうだいで共有地を持っています。隣人は駐車場に出入りするためにその土地を通るので毎月通行料を振り込んでいますが、近年、隣人が勝手に通行料を減額し、すでに100万円以上不足しています。
隣人は親戚のため、父の代から契約書は交わしていませんが、不足分を支払ってもらうにはどうしたらよいですか。(三重県・48才・パート)
【回答】
お父さんの代から土地の利用契約があり、通行料も決まっていたのですから、隣人は通行する限り、決まった通行料を支払う義務があります。一方的に金額を変更することはできません。
その不足額が100万円以上にもなったということですから、「近年」といっても相当長期ではないかと思われます。後記の通り、心配な点がありますが、ひとまずその点をおくと、まずは不足額の支払いを求めることができます。
その方法ですが、最も簡単なのは、あなたが不足分全額について支払いを請求すればよいのです。お母さんときょうだいで相続した土地ですから、法定相続分通りだとあなたの持分は一部に過ぎません。しかし、共有地の有償使用を認めた場合、地主の土地を使わせるという債務は、共有する土地を共有者ごとに分けられないので、その債務は不可分です。
使用料はその不可分債務の対価ですから、その支払いを求める権利も不可分の債権として、共有地主の1人がすべての共有地主のために全額を請求できます。つまり、あなたは不足額のすべてを請求できるわけです。もっとも共有地主全員のために請求するのですから、支払いを受けた金額は共有持分に応じて分ける義務があります。
また、隣人に不足分を請求したところ減額を要請されたような場合は、あなたが単独で応諾することはできません。共有物の管理行為になりますので、持分を基準に多数決で決める必要があります。