鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第20回は「システムとしての鉄道」について。
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これまでは、車両や線路など、鉄道を構成する「部分」に使われている技術を紹介してきました。そこで今回は、あえて視点を広げて、鉄道の「全体像」に迫ってみましょう。
鉄道の「全体像」をとらえることは、むずかしいです。なぜならば、鉄道は多面体のようなものであり、角度によって見え方が変わるからです。
ただ、技術という側面でその「全体像」の特徴を一言で表すと、「鉄道は列車ダイヤに従って陸上輸送を実現するシステムである」と私は考えています。
こう書くと「わかりにくい」と感じる方が多いでしょう。とくに最後の「システム」という言葉はイメージしにくいかもしれません。
「システム」は、「システムキッチン」や「バス(浴室)システム」のように、わたしたちの家庭に入り込んでいる設備の名前に使われている言葉なので、「どこかで聞いたことがある」と感じる方は多いかもしれません。ただ、その意味は一般にはあまり知られていません。
そこで今回は、時計やオルゴールを例にして、「鉄道はシステムである」ということを説明します。