税を集める権力と予算を振り分ける権力を切り離す!「財務省解体シミュレーション」
こうして政治家、他の役所、民間の企業に“アメ”を与えることで影響力を誇示しています。
一方、税務署を傘下に持つ国税庁は普段から政治家やその周辺の税務上の問題となる材料を集めています。実は、これが政治家は一番怖い。誰でも細かいところを突かれれば何かしらの問題は出てくるものだからです。政治家に増税をお願いする時に、その材料が無言の圧力になる。実際に突きつけなくても、政治家を不安がらせるだけで効果があり、増税に反対しにくくなる。よほどの覚悟がないと財務省とは戦えません。
そしてメディアも財務省には弱い。
新聞社もテレビ局も、財務省の取材は財研(財政研究会=財務省内にある記者クラブ)に所属している記者がやる。財務官僚は日頃から財研の記者に、「お前たちには特別に、これを教えてあげる」と情報を流して関係を構築したうえで、財研以外の記者が批判的な記事を出せば、そのメディアの財研記者が呼ばれ、「こういう記事は気を付けてください」と言われる。“逆らうような報道をするなら、もう情報をあげないぞ”と他のメディアには伝えた情報を出さないようなやり方をします。
実際に財務省批判が湧きそうになると、官僚のほうからメディア側へ「ご説明させてください」とやってきます。
財務官僚は高度な理論武装をしていますから、普通の記者やディレクターが、そのような「ご説明」を受けると、皆丸め込まれて財務省のサイドに立った見方になってしまう。あまり財務省に批判的にやるとどんな嫌がらせをされるか分からないから、批判を抑制的にした番組づくりになる。
メディアも税務調査が怖いので、経営陣は財務省批判をしようとする記者がいれば、「お前、本気で財務省と闘うなんてことはするなよ」という姿勢にならざるを得ないのでしょう。メディアがこのように及び腰だからこそ、SNSなどで「財務省解体デモ」が盛り上がるのではないでしょうか。
ただ、これほどの力を持つ財務省から権限を奪うことができるのか。本当にやろうとすれば、財務省は霞が関、経済界まで動かして潰そうとするでしょうから、たいへんな争いになりますよ。政治家とメディアの覚悟が問われます。
【プロフィール】
古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。元経済産業省官僚。東京大学法学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。
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※週刊ポスト2025年3月28日・4月4日号