財務省から権限を奪うことはできるのか(元経産官僚・古賀茂明氏)
本誌・週刊ポスト前号(3月10日発売号)で特集した“財務省解体”を求める声がさらに高まっている。かつての大蔵省接待汚職事件や金融危機の時以来の激しい批判だ。当時は国民の声を受けて政治が「大蔵省解体」に動いた。橋本龍太郎内閣が進めた中央省庁再編(橋本行革)で大蔵省から金融監督庁(現在の金融庁)を分離する「財政と金融の分離」が進められ、大蔵省は「財務省」に“格下げ”された。いわば「第一の解体」だ。
だが、いまや財務省は完全に復権。金融庁長官、内閣府事務次官、環境省事務次官など各省庁のトップに財務官僚を送り込み、霞が関に“植民地”を広げている。そして政治を支配し、国民に負担増を強いている。「今こそ第二の解体が必要ではないか」──。財務省から強すぎる権力を奪う方策について、元経済産業省官僚の古賀茂明氏の考えを聞いた。
財務省批判ができないメディアと政治家こそ改革すべき
財務省が政治家や他の役所、企業に対しても強いのは「予算編成権」と「徴税」の両方の権限を握っているからです。
予算でモノを言うのはどの地域や事業にいくらの予算を配分するかの箇所付け。主計局が個別の政治家に恩を売りながら、裁量的に決めていく。政治家の頬を札束でひっぱたいて言うことを聞かせるのではなく、政治家から「いつもお世話になってます」と言われるような関係づくりをする。他の役所に対しても、予算をつけてやる立場にある。
税でいえば業界ごとに優遇措置を与える租税特別措置。税制面での各業界の利権で、非常に細かい規定がたくさんあります。これを決める権限を主税局が持っていて、業界に睨みを利かせている。そして財務省は租税特別措置をめぐる業界との交渉役に政治家を入れることで、政治家が業界に恩を売れるようにしてやる。
その役割を担うのが自民党税調です。だから自民党税調は財務省と手を組んで自民党内で揺るぎない力を持っているのです。