米中デカップリングに巻き込まれるとさらなる価格上昇
為替レートに話を戻すと、FRB(連邦準備制度理事会)が市場の予想を超えるスピードで金利を上げかねない状況で、日本は利上げが難しいことを海外勢に見透かされて、円が売られ続けてしまいかねない状況だ。
日本経済について、円安はいつの間にかのメリットからデメリットになってしまった。日本の貿易収支は昨年の8月以降、今年の3月に至るまで、8か月連続で赤字が続いている(ただし、2、3月は速報値)。貿易赤字が定着しているが、その背景には構造要因として日本の輸出産業の国際競争力が低下していることが挙げられる。
エネルギー、穀物など、需要を減らしにくい製品を輸入に頼らなければならない日本にとって、輸出産業の復活は喫緊の課題である。企業がイノベーションを加速させ、国際競争に打ち勝ち、輸出力を高めるしかないのだが、それができないから日本はこの30年間、低成長から脱出できないままでいる。
米国による中国とのデカップリングに日本が深く巻き込まれると、中国は日本の最大の貿易相手国、輸出先であるだけに、貿易収支の改善の道はさらに遠のく。欧米、非欧米の対立は、非欧米側が多くの資源を持つだけに、日本が欧米側に着く限り、資源、穀物の調達に苦労し、そうした製品の価格がより上昇し、日本経済を直撃する。
円安トレンドを止めることができるとすれば、政治的なやり方で米国から為替介入の同意を取り付けることぐらいだろうか。それができたとしても、介入の効果がどの程度あるのか未知数だ。結局、米国が利上げを続ける限り、円安トレンドも続く可能性が高いのではなかろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。