宮崎県日向灘を震源とするM7.1の地震をきっかけに、政府が史上初となる南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表、改めて震災への備えが意識されている。
被災時に重要となる飲み水の確保。気になるのは発がん性などが指摘される有機フッ素化合物「PFAS」だ。各地の水道水などで検出され、不安が高まっている。京都大学大学院医学研究科の原田浩二准教授(環境衛生学分野)が解説する。
「PFASは自然界にはほぼ存在しない人工的な化学物質です。水や油を弾き、熱や薬品にも強い性質があるため、様々な生活用品に使われてきた。
便利な機能性を持つ一方、分解されにくいため自然界にいつまでも残る。残留したPFASは川や海に広がり、やがて人体に入ってくる。数年~数十年の長期にわたり摂取することで、発がん性など様々なリスクがあると明らかになっています」
昨年11月にはWHO(世界保健機関)の専門機関がPFASのなかでも代表的な物質のPFOAの発がん性分類を喫煙などと同格の「発がん性がある」と評定。最も危険な分類へと引き上げた。
被災時の備えとの関係で気になるのは、自宅に保存するミネラルウォーターだろう。今年7月、神戸市内の地下水を使ったミネラルウォーターから水道法上の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)の約6倍に相当する濃度のPFASが検出される例が発覚した。
「厚生労働省と消費者庁が実施した含有実態調査では、9割以上のミネラルウォーターが1リットルあたり2.5ナノグラム未満で、国内で流通するほとんどの商品の安全性が示されました。ただし、神戸市のような事例もあり、PFASが混じっている可能性はゼロではありません」(原田氏)
暫定目標値を超えていた商品名は公表されていないが、保存するミネラルウォーターが安全かをどう確認すればいいのか。
「製造販売元の企業のホームページ等を見て情報がないかを調べたり、企業に直接、PFAS測定の有無や数値を問い合わせるほかありません」(原田氏)